省察

「歴史」は、このように、生のささやかな輝きと交替者のいない死によって成り立っている。

 

ロラン・バルト,沢崎浩平訳「省察」.

 

 

午後六時頃、べッドでうたたねをする。窓は曇り日の夕暮のいくらか明るんだ空に向かって大きく開か れていた。 その時、 私は流体 の幸福感を味わった。すべては液体で、空気 で 、飲めるものだ  (私は、 空気を、天気を、 庭を飲む)。 そして、今、私は 鈴木を読んで いるので、それは「禅」で いうさびの状態にかなり近 いように思える。あるいはまた (私はブランショも読んでいるので) 、 ブランショプルーストについていう《流れる重さ》に近いように思える。    

 

ロラン・バルト,沢崎浩平訳「省察」.